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日本では危険な外来種?!Knoblauchsrauke(ガーリックマスタード)

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もうすぐ春!!!!!!!春です!!!!

ドイツは、2月後半ごろから段々日照時間も長くなり人々も外に出歩くようになります。いつもは表情がなく冷たく(!)見えるベルリンの人々も、最近は心なしか嬉しそうで明るい表情をしている人が多くなった気がします。

日照時間が少ない地域ではうつ病の発症率が高まるという調査結果を耳にしたことがありますが、それは暗くて長い冬を毎年耐えているドイツ人もその例にもれません。冬になると、ビタミンDを錠剤などで進んで摂取するようお医者さんからも勧められたりするほど、ドイツの冬は長くて暗く精神的に辛いものです。ドイツに住んでからというもの、何故ドイツ人がここまでお日様を待ち焦がれ、日光を異常なほどまで求めるのかが、自分も身に染みて理解できるようになりました

そして、私が春を待ち焦がれるのには、もちろん他の理由もあります。それは、薬草が一斉に生えてくるのが春だからです!!

日本では春はスギ花粉の時期で、いつもは世間が桜シーズンで花めいているのに自分だけ浮かない気持ちで過ごすことが多いのですが、ドイツでは白樺アレルギーはあるものの、その憂鬱な気持ちまでも吹き飛ばしてくれるほどこの薬草シーズンを心待ちにしています。3月になると毎日道をチラチラ若芽の様子を薬草が生えそろうのをチェック。冬から日照時間が少しずつ長くなるのが本当に嬉しいです。

春には以前にご紹介した熊ネギやミラクルネギ、セイヨウイラクサ、野生のルッコラが続々と生え揃いますが、私のお気に入りはなんと言ってもガーリックマスタード。この植物が生えてくるのが待ちきれません。この植物、お酢に漬けると旨味のある黄金色の美味しい酢になります。味は少しピリッとしたニンニクの香りが若干する、水々しくて柔らかい山菜という感じです。

ドイツでは、このガーリックマスタード酢をサラダドレッシングとして使うように書かれているレシピが多いのですが、専らの私のお気に入りは餃子の付け合わせにすること。

シンガポールに三年住んでいた時に、餃子を食べる時には黒いお酢(香醋という酢のようです)と千切りの生姜だけを合わせて食べるのが現地のやり方でわたしもそうしていました。この感覚で、このガーリックマスタードを漬けた酢に少しだけお醤油を混ぜ、酢漬けの花や葉や茎をゆで餃子と一緒に食べるのが本当に好きなんです。去年はすっかりはまってしまって、500mlほどの瓶2つに仕込んだ酢と酢漬けのガーリックマスタードを一人で1ヶ月半ほどで平らげてしまいました。笑

Knoblauchsrauke(ネギハタザオ)
柔らかい新芽を出すガーリックマスタード

 

まとまって生えるKnoblauchsrauke(ネギハタザオ)
まとまって生えるガーリックマスタード

 

一斉に生えそろう若葉は少しワサビの葉に似ています。
一斉に生えそろう若葉。葉ワサビの葉に随分よく似ています。

もちろん、ガーリックマスタードは薬草でもありますので、ただ美味しく食べるだけではなくその効能も期待できます。

ガーリックマスタードには、ビタミンCやプロビタミンAが豊富に含まれており、春の疲れた体に滋養をつけてくれるだけではなく、この植物の辛味の元となるマスタード油配糖体が、細菌の増殖を抑制しつつ不快な鼓腸(腸にガスが溜まっている状態)を引き起こす真菌を腸から追い出す働きがあります。また、腎臓を介して体の解毒作用を刺激し促します。大さじ一杯のガーリックマスタードを250mlのお湯で煎じてうがい薬として使用すると、歯茎の炎症や歯のぐらつき(おそらく炎症に起因するぐらつきに対してのみ)に効果があります。

ガーリックマスタードのドイツ名はKnoblauchsrauke、その直訳は英名でもあるガーリックマスタード、そして和名はネギハタザオ。アブラナ科の2年草で原産地はヨーロッパ、西アジア、中央アジア、北西アフリカ、モロッコ、イベリア、イギリス諸島、北スカンジナビア、中国西部のパキスタン北部と新疆ウイグル自治区の東とのことで、かなり広範囲に自生しています。

ガーリックマスタードの花は小さくアブラナ科らしい四つの十字架のような形の花びらが特徴です。

葉ワサビや花ワサビにそっくりで、わたしはドイツに来てからずっと「この植物、アブラナ科の何かだな。葉ワサビにしては水場に生えているわけでもないしなぁ。調べて是非とも採って食べなければ!!」と思い続けてきたのですが、結局葉ワサビではなくがっかり。それでも、アブラナ科で食べられることは合っていたので嬉しかったです。

葉ワサビの調理方法として、熱湯をかけてから冷凍庫で急速冷凍をすると辛味が増すと父から教わりずっとそうしてきましたが、おそらくガーリックマスタードでもそうすると辛味が増すような気がいたします。近いうち、実験がてら試してみたいと思っています!

ちなみに、ガーリックマスタードの学名はAlliaria pediolataといいます。そのまま読むとアリアリア。下から読んでもアリアリアです。笑 ちょっと可愛い。面白いなと思うのが、普通のニンニクの学名はAllium sativumなので、このAlliの部分の名前の共通点から「もしかしたらこの植物同士、共通の風味なんじゃないかな」とちょっと思いますよね

可愛い名前の植物ではありますが、日本では長野と北海道の円山公園で外来種として帰化しているのが発見され、そのアレロパシー作用(植物が放出する化学物質が、他の生物になんらかの作用を及ぼす現象をアレロパシー作用と呼びます。ガーリックマスタードの場合、カツラ、ミズナラ、シナノキが深く依存する菌根の成長を妨げるらしいです)から円山公園で国の天然記念物である天然林を守るべく地道な駆除作業が行われているそうです。その他、ゴボウやイワミツバも駆除対象となっているそう。イワミツバも美味しいし痛風の薬として使われる良い薬草なのですが・・・。

私がドイツでありがたく摘ませていただいているこの植物たちが、日本では悪者として駆除されているというのは、なんだか心苦しいというか、寂しい気がします。

アレロパシーといえば、セイヨウアワダチソウが有名で、侵略的外来種としてワースト100に選ばれた植物です。この植物も、薬草として優秀で、膀胱炎などにとてもよく効くのですが、そのアレロパシー作用でブタクサやイネ、ススキなどの競合種の生育を抑制してしまうとのこと。どうせ駆除するなら、薬草として使ったらいいのになぁ・・・。

なんならそこら辺にある外来種の野草を、日本人国民のみなさまに食べられることをお知らせして、馴染みの山菜として食する文化を作り上げるか、あるいは外来種の薬草で、出来るだけ必要以外は正規の薬に頼らない薬草生活をするというのはどうでしょうか!そうしたら、ガーリックマスタードもイワミツバも定期的に一定量を採取されることで増えすぎないし一石二鳥では??

日本に存在する外来種の植物は、そもそも元から広いヨーロッパ大陸で進化しながら動物からの食害や厳しい環境に絶え間なく対抗し続けて今でも生存する千軍万馬の強者たちということ。

例えば、フキタンポポ(学名:Tussilago farfara)という植物があるのですが、フキタンポポが栄養不足、水不足、土壌不良などの環境ストレスに晒された場合、植物に含まれる毒素であるピロリジジンアルカイドが増える傾向にあります。

ヤナギなどに含まれるサルチル酸という物質も植物が病原菌と戦うために全身に情報を伝達して防御体制を整えるために作られた化合物だといいます。

フキタンポポのピロリジジンアルカイドを増やす行為も、おそらく緊急時に動物からの食害を避ける最後の手段なのではないか、とわたしは思っています。植物も生存のためにこうして戦っていると思うと、健気に頑張っているんだねえ、偉いねえ、となでなでしてあげたくなります。笑

フキタンポポ(Huflattich, Tussilago farfara)
フキタンポポ (Huflattich, Tussilago farfara) Andreas Trepte, CC BY-SA 2.5 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5>, via Wikimedia Commons

このような過酷な環境にも耐え抜いてきた外来種の植物が、たまたま日本のような島国に入ってきたら、これまでの競争相手がまずはいない環境で有利ですよね。

わたしが西洋の薬草に惹かれた理由にその薬効の高さがあるのですが、それはこうして外来種が厳しい環境を生き抜いて来たからこそなのではないかと思うんです。

例えば、オオバコ科ヘラオオバコ(Plantago lanceolata)のお茶をドイツ旅行中に初めて飲んだのですが、これまで長年悩まされて来た咳や気管支炎の初期症状がお茶で改善したことに本当にびっくりしました。それが今の薬草への思いに繋がっています。

まだ証明は出来ていないのですが、わたしの自論として、外来種の方が日本在来種の薬草よりも効果が高いのではないかと思っています。これは、もう少し書籍を調べてその自論が合っているか分かり次第このブログに追記しようと思います。

私たちが小さな頃から馴染みのある植物も実は元は外来種のものも多い。日本国内の外来種の話だけに集中しがちですが、日本から海外に持ち込まれたイタドリなんかも、イギリスや北米では猛威を振るっています。(実はここドイツでも、名前に「日本の」とついている植物が結構多く見受けられ驚きます。)

イタドリが故郷日本で広がりすぎない理由は、イタドリに対抗する虫(イタドリマダラキジラミ)や競合する植物がいてそのエコシステムが構築されているからのようです。

要は、植物は新しい環境に競合する動植物がいない場合に植物は勢力を広げられるので、日本で貴重とされている在来種が海外では競合する相手がなくかえって幅をきかせている、ということなんです。イギリスにはイタドリマダラキジラミがいないので、伸び伸びと育つことができるのです。そうなると、必ずしも在来種=弱いとは限らないのですよね。この点、意外だなと思いました。

日本国内でも、どれもこれも一緒くたに外来種はダメとするのではなく、そのエコシステムにうまく取り込めそうなものは研究を進めバランスを見つつ帰化させ、侵略的外来種との区分けをしていけたらいいなと思います。私としては、ガーリックマスタードのアレロパシーは実は長い目で見たら有益で、日本で共存していける外国種なのだ、というどんでん返しの展開を期待しています!

イタドリ
イタドリ(Reynoutria japonica)小石川人晃, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

<参考文献・サイト>

“Unsere Heilkräuter” by Dr. Ursula Stumpf

“Deutsche Heilpraktikerschule Online-Ausbildung Phytotherapie, Atemwegserkrankungen” Kristin Metz

“一般社団法人北海道自然保護協会 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ksk/new/assets/link/5-1.pdf”

“国立研究開発法人国立環境研究所 日本の外来全種リストhttps://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/resources/listja_asteraceae.html”

“外国産緑化植物の問題点 ーリスク評価と今後必要な研究について一 藤井 義晴(2010年1月)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010782484.pdf ”

“ウィキペディアKnoblauchsrauke: https://de.wikipedia.org/wiki/Knoblauchsrauke ”

“松本薬剤師会 会営村井薬局ニュース 第148号 R4年11月15日発行http://www.matuyaku.or.jp/murai/okusuribako_data/No-148.pdf”

“https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4688,  回答: 久米 篤(九州大学大学院農学研究院教授)”

“植物はなぜ薬を作るのか(文春新書)斉藤和季”

“九州大学 農学研究院 天敵昆虫学研究室 イタドリの生物的防除 https://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/ine/itadori.html”

 

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