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ヘーゼルナッツの木 セイヨウハシバミ(Gemeine Hasel)

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ドイツはここ3日ほど続けて風が強く、窓の外では大きな木がゆっくりと音を立てながら大きな円を描いて揺れています。
モリバトも、昨日まではどうにか細い箸のような二本の足でバランスを整えながら木の枝にしがみついていましたが、今日は一羽たりとも見当たりません。

こんな風の強い日には、花粉症の原因となる「あの木」も強風に洗われて、黄色の花粉を思う存分振りまいています。

今日は、私の天敵である「あの木」の正体、セイヨウハシバミ(カバノキ科、学名Corylus avellana、ドイツ語ではゲマイネハーゼル Gemeine Hasel)についてお話したいと思います。

どうやら、ドイツ人にとっては大切な木らしいんです・・・。ま、しかたがないですね。笑

セイヨウハシバミの葉と実(ヘーゼルナッツ)
セイヨウハシバミの葉と実(ヘーゼルナッツ)(by Lemmikkipuu https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Corylus_avellana.jpg#/media/ファイル:Corylus_avellana.jpg)

 

セイヨウハシバミの花
セイヨウハシバミの花

 

アメリカ東海岸やカリフォルニア、シンガポールに住んでいた頃もそうでしたが、その土地で何らかのアレルギーが現れ始めるのは、いつも滞在が2年たったあたりからなんです。新しい土地で過ごして2年ほど経つと、喉がかゆく、鼻水がでて目が無性に痒くなってきて、「あ、これもしかしたら・・・。汗」と思い始めるわけです。

ドイツでも、だいたい2年すぎたあたりから花粉症の症状が現れ始めました。

毎年バレンタインのあたりから症状が出ることを念頭に、2月に既に花粉をつけていそうな木を探していたら、ハーゼルナッツのなる木、セイヨウハシバミが黄色のふさふさの花をたっぷりと全身に携え、勝ち誇ったように立っているのが目に入りました。

ハーゼルナッツを食べると喉がかゆくなる症状からも、私を花粉症で苦しめている犯人はこやつでほぼ間違いなさそうです。
セイヨウハシバミの木
セイヨウハシバミの木

 

花粉症で苦しむわたしにとっては、セイヨウハシバミはどうしたって許せない存在ではあるのですが、ドイツでは魔力のある木としてよく知られていて、グリム童話にも度々登場するほどなんです。木の中でもかなり古い種類のものだそうです。

グリム童話の灰かぶり(シンデレラ)は、お母さんのお墓の近くに植えたセイヨウハシバミの木にやってきた小鳥が、灰かぶりに靴やドレスを運んできてくれたという話になっています。

「あれ?魔法使いは出てこないんだ〜!」と思いますよね。

グリム童話のシンデレラは、日本で知られているシンデレラのお話とは随分違うんです。

また、二股に分かれたハシバミの枝は、かつてのドイツで水脈や地下資源を見つける「占い棒」として使われていたようです。地中から発する鉱脈や水脈を感じると激しく震え、地面に引き込まれるように棒が下を向くとされ、そんな様子を言い伝える絵も残っているんです。少し怖い。笑

ここでちょっとセイヨウハシバミの薬草としての効用をご紹介します。
まずは、全体に含まれている成分。ハシバミの葉は0.04%の精油、パルミチン酸、パラフィン、ミリシトロシド、ショ糖、タラセロールおよびβ-シトステロールを含み、なんと若い葉はそのままほうれん草のように食用にできるとのこと。

また、葉から作られたお茶は、血液を浄化し、咳や腸のカタルにも効くとのことで、樹皮も同じくお茶として内服することができ、解熱作用があるそうです。

お茶に浸した湿布は、にきび、湿疹、潰瘍、しもやけを和らげるとも。

こんな処方をしたら、私はアレルギーでどんなになっちゃうか想像するだけでドキドキしますが・・・。笑

わたしたちにも馴染みのあるヘーゼルナッツはセイヨウハシバミの果実で、タンパク質とビタミンA、B、C、E、炭水化物、リン、マグネシウム、カリウム、鉄などのミネラルを含み栄養豊富です。

また、外的な処方方法としては、ヘーゼルナッツをペースト状にし外用薬として使うことで傷や炎症を起こした目が化膿するのを抑える働きをするとの記述もありました。

やはり、わたしは話を聞くだけで目が痒くなってきそうです・・・。笑

アレルギーがない人にとってはこのように有益なセイヨウハシバミですが、ゲルマン民族は、かつて森の奥深くに部族として集団で住んでいた頃からハシバミの木を”Frau Haselin”と呼んでいたそうです。

Frau Haselinは直訳で「ハーゼル夫人」。

なんとも木をそう呼ぶのはかなりのリスペクトを払っているように聞こえますね。

これはわたしの全くの想像ですが、沢山の栄養豊富な果実をつけ、その木に部族の生命の存続がかかっていると言っても過言ではないことから、畏多い存在として扱われていたことからそう呼ばれたのではないでしょうか。

よって、「ハーゼル夫人」は決して切り倒してはいけないとも伝えられてきました。

また、その土地に住む者以外はハシバミの木から一握り分以上のヘーゼルナッツは持ち帰ってはいけないとのルールもあったとのことですから、どれだけドイツ人達にとって貴重な栄養資源として大切にされていたかが分かりますね。

調べていて一つ気になったのは、常にわたしが手元に置いている薬草の本3冊(かなり詳しいものです)には、果実であるヘーゼルナッツのマッサージオイルとしての効果や栄養価の高さについての記述はあったものの、それ以外の葉や樹皮についての効能は書かれていないこと。
今回は、インターネット上で葉と樹皮の効能を何とか探すことはできましたが、わたしが所有する、名付けて「三大長老ブック」(私の持っている三冊はとても知識豊富な村の長老のようなイメージなのでそう呼んでいます 笑)に載っていないということは、セイヨウハシバミの葉や樹皮は薬草としての効果が低いからなのかなあ、とも思いました。
私は基本、薬草は自分で試してみて効果を実験するのですが、セイヨウハシバミに関してはなかなか自身で服用しての実験が出来ないのが残念。

ヘーゼルナッツの葉と樹皮の効用について、次回もし専門家に質問できる機会があったら是非訊いてみたいです。

あと、ヘーゼルナッツ関連でびっくりしたことは、ベルリンの街路樹からよく落ちてくるモジャモジャの実もトルコハーゼルナッツ(Corylus colurna)という種類のハシバミだったこと!この木、ベルリンの至る所に植えてあります。

 

トルコヘーゼルナッツ
トルコヘーゼルナッツが入っているモジャモジャ(写真は3年前のものです。)

早速拾って食べてみたのですが、普通のヘーゼルナッツよりトルコヘーゼルナッツは味がとてもマイルドで優しい味。殻は小さく固く、中身は少ししか入っていません。それゆえ、今後わざわざそれを拾って食べようと思うことはないかもしれませんが(私は好奇心から早朝に袋にいっぱいモジャモジャをかき集めていたので、かなり怪しいアジア人に見えたことでしょう 笑)、食べてみてやっとカラスやスズメや鳩が、車のタイヤで潰されたトルコヘーゼルナッツの殻が広がる危ない道路に集まっている理由が解けました。モジャモジャを競って集めているのは、ベルリンでは私か鳥だけかもしれませんね。笑 鳥たちは、栄養価が高く美味しいので、命がけでも食べたいんだと思います。

 

トルコヘーゼルナッツ(殻付き)
トルコヘーゼルナッツ(殻付き)

 

トルコヘーゼルナッツの実(中身)
トルコヘーゼルナッツの実(中身)

このトルコヘーゼルナッツ、最初は全くなんの植物か検討がつかなかったのですが、葉の形や花、幹の様子から探って詳しく調べてみると、自分が想像した通りの科の植物だったりするんですよね。

当たった瞬間は、まるで長い間考えてきたクイズに当たったようで嬉しくなるし、それとは反対に全く想像もできなかった植物と思わぬ共通点が見つかったりして、時にはそれにまつわる歴史まで垣間見えたりして本当に面白いものです。

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