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グルーワイン、フォイヤーツァンゲンボーレ、そしてスパイス

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あと一週間でクリスマス。

今年もベルリンではクリスマスマーケットが開催されることとなり、外で温かい飲み物を片手に友人との楽しいひとときを過ごす人も多いようです。わたしも、今年こそクリスマスマーケットには行かないことにしましたが、来年こそは行きたいです!

ドイツのグルーワイン
クリスマスマークトで飲めるグルーワインやフォイヤーツァンゲンボーレ (by Basotxerri, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons)

 

クリスマスマーケット(ドイツ語でバイナハツマークトWeihnachtsmarktといいます)で売られている飲み物には、ホットアップルポンチやホットココア、ビールやワインと色々ありますが、今回ご紹介したいのは、なんと言ってもグルーワイン(Glühwein)とフォイヤーツァンゲンボーレ。

グルーワインの”グルー”は直訳すると”輝く”という意味なのですが、イメージとしては熱を帯びて輝く感じらしいです。温かい赤ワインで体も温かくなるからなんでしょうか。 ちなみに蛍もGlühwürmchenというので、直訳すると「輝くいもむしちゃん」という感じ。か、可愛い・・・。

このドイツ語を知って、もしかして、蛍ってイモムシの頃から光るのかしら、と調べてみたら、なんと蛍は幼虫の頃から光るんだそうです!知らなかった!!

ちなみに英語ではFireflyなので、既に羽があって飛んじゃってますね。

言語によって、その生物のどの成長過程を表しているかが違うってほんと面白い。 すごいなあ〜。

こういう時、いつもすごく感動しちゃいます。 これだから、言語の学習ってドイツ語にどんなに裏切られ続けても続けちゃうんですよね。 これ、もうマゾの域ですね。笑

さてさて、蛍の話から戻りまして・・・。 グルーワインとフォイヤーツァンゲンボーレは、どちらも赤ワインに様々なスパイスで香り付けをし た温かいアルコール入りの飲み物で、ぶっちゃけ2つとも似ています。

しかし、フォイヤーツァンゲンボーレは、更にラム酒に火をつけ砂糖を溶かしながらグルーワインに注いでいく過程が足されるので味が少し違います。 これらの飲み物を、クリスマスマーケットの街ごとに違う、毎年新しく作られるクリスマス模様の

可愛いマグカップで飲むんです。寒空の下、温かいフォイヤーツァンゲンボーレを少しずつ飲むと、いかにもクリスマスだなーって感じです。

グルーワインの中身
グルーワインの中を覗いてみるとこんな感じ。(by Angela Huster, CC0, via Wikimedia Commons)

私は、2018年のライプツィヒでのクリスマスマーケットで使ったマグカップを記念として持ち帰ってきました。

あ、でも、もちろん盗んできたわけじゃありません。

なんと、クリスマスマーケットで買う飲み物代にはマグカップの代金も含まれているんです。飲み終わった後にマグカップを返すと、そのマグカップ代金(ディポジット)を返してもらえますが、もしキープすることに決めたらそのまま持ち帰ることができるシステムなんです。

クリスマスマークトで集めたマグカップ
それぞれのクリスマスマークトで集めたマグカップたち。

しかも、とっても可愛いクリスマスカップなのに、確かそのディポジットもほんの2ユーロ(大体260円ぐらい)だったはず。 その年のクリスマスの思い出は、温かい飲み物を飲んだそのマグカップと共にいつまでも記憶に残るんですよね。

記念のお土産を新しく買うのもいいですが、この年のスペシャルなマグカップを、しかも 実際に自分が飲んだものをそのまま持ち帰られるってのが、私はなんかすごくいいな~って思います。

そして、もしそのカップを返しても、そのマグカップは普通にお店のカップとして使われ続けるわけです。

別に買っても買わなくてもどちらでもいいわよ~っていう雰囲気。 そして、売る人、買う人がわかりやすいように、マグカップにちゃっかり200mlの線もついてます。 そしたら、ちゃんと200ml分売ってるって分かりますもんね。

さすがドイツ、合理的!

クリスマスカップの中身
しっかり200ml入れられるよう、線がついています。

そして、グルーワインとフォイヤーツァンゲンボーレに欠かせないのがスパイスです。

グルーワインとフォイヤーツァンゲンボーレに使われるのは、カルダモン、クローブ、オールスパイス、スターアニス、シナモン、コリアンダーシード、アニスシード、オレンジの輪切りなどなど、使われるスパイスはレシピによって様々です。

これらは元々ヨーロッパに自生しているものではないので、わたしが普段ドイツで好んで観察している薬草とはまた違うのですが、使用されてきた歴史がとても長く、私たちもよく耳にするスパイスばかりだと思います。

ということで、おそらくドイツ人の皆さんが「これはグルーワインに絶対に入っていなきゃ!」と思うであろう5つのスパイスを、薬草としての効能と併せて以下にご紹介します。

●カルダモン(Grüner Kardamom)

まずはカルダモン。 南インド、スリランカ、タイ、イラク原産です。

グリーンカルダモンとブラックカルダモンがあるようですが、私はグリーンの方しか使ったことがありません。 インドのデザートに頻繁に使われており、私の大好きなインドのKulfiというアイスクリームにも入っています。ドイツではカルダモン入りのチョコレートも結構売っていて、チョコをあまり食べない私でもついついカルダモン味だと美味しくて買ってしまいます。

グリーンカルダモン
グリーンカルダモン(By Augustus Binu, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

 

インドのアイスKulfi
インドのアイスKulfiにも入っています。(Commoner247, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons)

消化を促し、腹痛を和らげる、けいれんを抑える効果があるとのこと。 現在のインドでは喘息、気管支炎、腎臓結石、食欲不振、衰弱に対して使われるが、 中国では失禁に対して処方されたり強壮剤として使われているそう。

●クローブ(Nelken)

クローブはインドネシアモルッカ諸島原産。

東南アジアでは何千年と使われ続けており、万能薬としてあらゆる病に効くとされている。 殺菌力が高く、胃腸内に溜まったガスを排出させる効果や鎮痛作用がある。嘔吐を防ぎ、痙攣を抑え、寄生虫を駆除する働きもする。 歯痛、ニキビや口内炎にも効果的だとのこと。

錆びた釘のようなクローブ
錆びた釘のようなクローブ(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ClovesDried.jpg#/media/ファイル:ClovesDried.jpg)

 

クローブの木
クローブの木(スパイスとなるクローブの蕾が見えます)(By Prof. Chen Hualin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons)

そしてクローブは、ドイツドレスデン大学耳鼻咽喉科のHummel氏によって開発され日本でも知られている嗅覚障害トレーニングにも使われている香りの一つです。

ドイツ語でマルハナバチ(Hummel)
<おまけトリビア>
ドレスデン大学のHummel氏の名前はドイツ語でマルハナバチという意味なんです。 可愛すぎ!!(Unistudent119, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

 

モルッカ諸島では切ったオレンジにクローブを刺したものが蚊や蛾避けとしても使われているそうで、なんと記憶力を高める効果もあるとのこと。

クローブの虫除けオレンジ
虫除けオレンジ(By Wendy Piersall, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons)

また、アジアではその優れた殺菌力から、マラリア、コレラ、結核や疥癬などにも用いられてきたようです。 外部的に使う場合は、皮膚炎を起こす場合があるため専門的知識を持った者の指示に従って使用することとし、妊娠中は使用しないことには注意しなければいけないようです。 ちなみに、クローブの芳香を最もつかさどる化合物のオイゲノールは比較的少量でも毒性があるようです。 何でも摂取しすぎはよくないですね。

●オールスパイス(Piment)

カリブ海地域、中央アメリカ、南アメリカ原産。

オールスパイスの実
オールスパイスの実 (By Jonathunder, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

鼓腸(腸にガスが異常なほど溜まっている状態)や消化不良や下痢に対して使われるそうですが、強壮剤や下剤効果のある薬草と組み合わせて処方されることが多い。(下痢に対して使われるのに、下剤効果のある薬草と一緒に組み合わせるということろが謎。しかし、このように下痢にも効き、下剤として使われる薬草って時々あるんですよね〜。どういうことなんでしょう。腸を整えると言う意味では同じなのかしら。今後、その謎を知るため勉強し続けたいです!)

体によい刺激を与え、胃腸を落ち着かせる効果があるとのこと。 殺菌力があり、前記したクローブと似た効能があるようです。 クローブと同じく、妊娠中は薬として使用しないこと。

オールスパイスの花
オールスパイスの花 (By Christian Blue, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons)

<オールスパイスの3つのトリビア>

  • なんと、オールスパイスはクローブに似た香りなので少し調べてみたら、クローブとオールスパイスは同じフトモモ科!やっぱり~!! 葉の形も似てるし、納得!!
  • ”すべてのスパイス”という意味の「オールスパイス」はシナモン・ナツメグ・クローブの3つの風味を併せ持っていたことからそう呼ばれはじめたらしい!
  •  クローブの芳香を最もつかさどる化合物のオイゲノールはなんとオールスパイスの主成分でもあることが判明!!やっぱり香りが似てるはず~!!!

トリビア、弱いんです・・・。

また興奮してしまいました。

 

●八角(Sternanis)

八角は中国、インド、ベトナム原産。

八角は豚の角煮や中国風の煮卵(茶葉蛋<チャーイエダン>という名前だとは知らなかった)によく使われます。 シンガポールに住んでいた頃も道端で売っているのを見かけました。

日本でもおなじみの八角
日本でもおなじみの八角(By Sanjay Acharya, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons)

 

茶葉蛋<チャーイエダン>
茶葉蛋<チャーイエダン>(By Dromafoobeno, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons)

しかし、日本には近縁種のシキミという植物がありこちらは有毒なので要注意。

(シキミは、彼岸花のように、動物が荒らすことがないようにと墓地の周りに植えられているらしい!)

中国ではリューマチ、腰痛、ヘルニア療法に使われていて、精神を刺激し、利尿効果、ガスを減らし消化を促すとのこと。

特に疝痛(通常消化器疾患により生ずる刺すような強い痛みの腹痛)に効果的で、子供にも安心して与えることができる。

腸や膀胱のヘルニアには、フェンネルと組み合わせて処方されることが多い。 どちらの薬草も臓器の筋肉や痙攣を沈めることができる。歯痛にも効く。

●シナモン

スリランカ及びインド原産。シナモンのその香りは、好き嫌いがはっきり分かれるかもしれませんね。

その昔、その価値は銀の15倍だったとも!

ドイツでは、「ミルヒライス」というお米を牛乳で炊いて、砂糖やシナモンなどで味付けしりんごのすりおろしを添えるなどした食べ物があり、デザートとして、あるいは主食として食べられています。

おなじみシナモンスティック
おなじみシナモンスティック(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cinnamomum_verum_spices.jpg#/media/Datei:Cinnamomum_verum_spices.jpg)

 

シナモンの葉
シナモンの葉。どこかで見たことある気がするのは気のせいかしら。(By L. Shyamal, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons)

 

ドイツのミルヒライス
ドイツのミルヒライス。日本人は苦手な方が多いらしいですが、私は結構好きです。(© Alice Wiegand / CC-BY-SA-3.0 via Wikimedia Commons)

古代からインドとヨーロッパでは、シナモンが体を温める効果があるため、生姜と共に処方され冷えに使われてきたそうです。消毒効果、胃腸内に溜まったガスを排出させる効果、けいれんを鎮める効果、抗ウイルス効果もあります。

シナモンの注意点としては、クマリン(可愛い!!)という芳香成分の一種が含まれ、大量摂取することで肝障害が誘発される可能性を否定できないとのこと。

BfR(ドイツ連邦リスクアセスメント研究所)はサプリなどの長期の摂取は避けるべきとしています。

こうして調べる始めるといつも長~くなってしまいキリがないのですが、調べれば調べるほど薬草に秘められている力はすごいなあと感じます。

今回、毒素つながりで色々調べていたら、改めてキョウチクトウという極めて身近にある毒素が強い植物について知ることになったり、またギンピ・ギンピ(名前がすでにやばそう!)という一回毒針に刺されたら2年間も痛みが続くというオーストラリアの見かけは至って普通なのに恐ろしい植物についても知り、本当に世の中にはいろんな植物があるんだなあと改めて感動しました。

また機会があれば、このヤバイ植物たちについてもお話しできればいいなと思います。

<参考文献・サイト>
“Encyclopedia of Herbal Medicine” by Andrew Chevallier

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