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痛いぜすごいぜ!薬草セイヨウイラクサ(Brennesseln)

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以前、特別編でご紹介したギンピ・ギンピという恐ろしい植物を覚えていますか?

そう、刺毛に触れた人や動物に神経毒を送り込み、人間の感覚ニューロンを恒久的に変化させるあのやばいやつです。分かりやすく言うと、この植物に刺されてとげをすべて取り除いても、刺された時に既に体内の痛みに対する信号のシステムを変えられてしまうので、数ヶ月後、数年後でも痛みを感じ続けるようになってしまうんです。

そのギンピギンピを薬草としてご紹介するわけではございませんのでご安心を!

今回は、ギンピ・ギンピが属するイラクサ科の一種セイヨウイラクサのすごさについて語りたいと思います!!!このお方、本当にすごいので、そのすごさを知ってからリスペクトしかありません。セイヨウイラクサさまとお呼びした方が良いかもしれません!!

ではまずは気を落ち着かせて続けます・・・。

まず、セイヨウイラクサはドイツ語でブレンネッセル(Brennessel、学名Urtica dioica)といいます。薬草として使えるのは葉、種、根の部分です。温帯地域であれば、世界中のどこでも見つけることができるとのことです。アンデルセンの「野の白鳥」というお話にも出てきますが、主人公が手を痛めてでも編み続けたセイヨウイラクサの帷子(ひとえものの衣服)にもあるように、この植物にもギンピ・ギンピほどでは勿論ありませんが、葉と茎に棘があり、この棘が刺さるとジリジリと焼けるように痛くなります。ドイツ語のbrennenは燃えるという意味です。

セイヨウイラクサ
セイヨウイラクサ

葉に含まれる成分は、フラボノイド、ミネラル(鉄、マグネシウム、カリウム、カルシウム)、ビタミン、フェノール酸、多糖類、クマリン、クロロフィル、カロテノイド。

葉の効能としてよく知られているのは、血液の浄化と身体の解毒作用です。血液を再生する作用があり、健康だけではなく美容的にも効果があります。ドイツで主に知られている効能としては、腎臓や尿路の炎症を和らげる効果で、膀胱炎の軽い症状がある場合(トイレが近い、膀胱の辺りが痛いなど)は、まずは薬局などでセイヨウイラクサを勧められることも多いと思います。(その他にも膀胱に効く薬草はたくさんあるので、それは次回にまた書きたいと思います。)

更に、リウマチ性疾患にも効きその症状を軽減するともされています。例えば痛風では、体内の炎症を引き起こす物質を抑制し、軟骨塊の破壊を防ぐ尿酸の除去を助けるそうです。

なお、セイヨウイラクサの種子には植物ホルモン、ミネラル、ビタミンが多く含まれており、疲労回復を促したり記憶力を向上させる働きがあるとのことなので、ここ10年ほどで記憶力の低下が著しい私は是非この夏に沢山収穫したいと思っています。

また、根に含まれる成分は、β-シトステロール、Delta-5-Sterole、Lignane。(この2つは日本語で何と呼ばれているのかが探し出せませんでした。)

なんと、今回一番びっくりしたのはセイヨウイラクサの根の効能なんです!

根の何がすごいかというと、前立腺肥大症の原因の一部とされている5α-レダクターゼを防ぎ、薬草で唯一、遊離型テストステロンがグロブリンに結合するのを促し、前立腺肥大に関係しているとされる酵素への変換されるのを防ぐ役目を担っているからです!

何だかごちゃごちゃ言ってしまい、うまく伝わっておらず申し訳ないのですが、つまりはセイヨウイラクサだけが、今のところ薬草として、遊離型テストステロンが前立腺肥大症に有害なものに変わらないように手助け出来る植物だと証明されているということなんです。他の薬草でも前立腺肥大症の原因だと考えられているアロマターゼや5α-レダクターゼをブロックすることは可能なのですが、遊離性テストステロンの部分まではカバー出来ないんですよね。

通常の病院で使われている医薬品でなくても、このような複雑な人体のの仕組みに合わせてちゃんと効く薬草はそこら中に生えている!そして、それが今の時代に証明されていると言うこと、すごいと思いました!!

実際、薬草を使った医学の歴史は長く、今の形態の医学が発達したのはほんの19世紀終わりから20世紀。その間薬草を使った医学は重視させれていませんでした。しかし、ドイツでは特にここ過去15〜20年頃から薬草を使った医学が見直されてきています。

薬草か今主流の医学のどちらか一つということではなく、これらの医学が共存していき、症状や個人の希望によって、医療の種類を私たちが選べる世界になればいいなと強く思います。

ちなみに、セイヨウイラクサはドイツには本当にそこら中に生えていて、わたしはセイヨウイラクサの新芽が沢山生える頃には1週間に1〜2回は必ず採りに行っています。

セイヨウイラクサを洗ったところ。これを厚めのふきんに包んで絞り棘を無力化します。
セイヨウイラクサを洗ったところ。これを厚めのふきんに包んで絞り棘を無力化します。

野菜スムージーに入れたり、夜ごはんのおかずになったりと大活躍のセイヨウイラクサ。味も、特にクセもなく食べやすいです。しかし、毛があるので若干もふもふ感があるので(笑)スムージーにして毛が分からなくするまで細かくしてしまうか、卵焼きなどにすると口当たりが良くなるかと思います。数日乾燥させてパウダーにして保存しておくこともできます。

一点注意する点とすれば、採集時にこの植物の棘に触れてしまうと、人によっては5分ほど、私は次の日ぐらいまで痛くて厄介なので、手袋をして採集することです。その後、水に5分ほど浸した後、厚めのふきんに包んで絞るなどの処理の仕方さえしっかりすれば、本当に栄養価の高い素晴らしい山菜および薬草なんですよ。

旅行中に植物を生で食することは難しいかもしれませんが、お茶にしたものやパウダーにしたものは、オーガニックスーパーなどでも購入できますので、ドイツにお越しの際は是非試してみてください!

この間スムージー用に購入したパウダーにもセイヨウイラクサが入っていました。セイヨウイラクサのみのバージョンもありますよ!
この間スムージー用に購入したパウダーにもセイヨウイラクサが入っていました。セイヨウイラクサパウダーのみ(違うメーカーになりますが)もありますよ!

<参考文献>

“Unsere Heilkräuter” by Dr. Ursula Stumpf

“Encyclopedia of Herbal Medicine” by Andrew Chevallier

“Deutsche Heilpraktikerschule Online-Ausbildung Phytotherapie Urologie allgemein” by Kristin Metz

 

 

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